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競合排除:雛の腸内マイクロバイオータの確立

競合排除:雛の腸内マイクロバイオータの確立

孵化後の雛には、できるだけ早く、ストレスに適切な抵抗性を持つ腸内マイクロバイオータ(細菌叢)を定着させましょう。それは、将来の良好な生産成績や健康につながります。

通常自然環境下の雛は、卵を断続的に温めてくれる成鶏が居る巣の中で孵化します。成鶏やその糞に接触することで、孵化直後から微生物に初めて関わる機会を得ることができます。

のような自然状態において雛は、孵化後数日以内に成鶏由来のマイクロバイオータを獲得することが出来ます。それは、将来のストレスや疾病に対する、適切な防御力になり得ます(Kubasova et al., 2019)。 このマイクロバイオータの重要な特長の1つは、多様性が高く、親由来の特定属の菌を豊富に含んでいることです (Rychlik, 2020)。

一方で、現代の商業的な養鶏農場において、雛は清潔で消毒された孵卵器の中で生まれます。そうした雛の腸内マイクロバイオータの確立は、孵卵場や農場の好気環境に大きく影響されます。雛の日齢が進んで新しい微生物に触れるにつれ、徐々に腸内マイクロバイオータの定着が進みます(Broom and Kogut, 2018)。宿主に有益との報告がある、酸素耐性能を有するラクトバチルス属細菌は、生後数日内に小腸内に現れますが、安定したレベルにまで増殖するには2週間ほど掛かります。安定するまでの間に、サルモネラなどの有害な細菌が、雛の腸管に定着してしまう可能性があります。また通性嫌気性細菌である大腸菌はどこにでも存在する菌であり、雛への接触機会が多くあります。このような理由から、孵化後数時間以内に、できるだけ成鶏に近い健康なマイクロバイオータを雛に移行させることが重要となります。

競合排除(Competitive Exclusion;CE):生態系における自然現象

腸内細菌が、腸管の発達やエネルギー供給、炎症に対する免疫反応に大きく関与していることは良く知られるようになりました。しかし腸内マイクロバイオータを制御するメカニズムへの知見と理解は、未だ十分ではありません。
生態系では、同じ基質を利用する似たような2種類の生物は、同じ環境で同時に生存することができない現象が知られています (Wang and Liu, 2020)。この競合排除(CE)の概念を養鶏に応用した方法が、いわゆる「ヌルミ法」です。これは健康で安定した腸内マイクロバイオータを確立することによって、一過性の病原細菌から守るというものです。Nurmi博士とRantala博士は、この概念を1973年に初めて提唱し、成鶏由来の腸管内容物を与えることによって、若鶏をサルモネラ感染から守ることが出来ることを明らかにしました。これ以降、競合排除による腸管の健康維持についての論文は定期的に報告されており、健康な腸内マイクロバイオータを守るための製品の開発も進んでいます。

競合排除(CE): 作用機序

競合排除を意図した製品の中で、健康な成鶏の盲腸内容物を元に作られた製品が最も効果的とされています。CE製品の目的は、新しく孵化した雛に、腸管にまで届く初めての微生物源を与えることです。盲腸内容物には、多種の微生物が含まれています。これらの微生物を与えることで、バランスの良いマイクロバイオータを確立することができます。さらに将来に予想される様々なストレスに対して、健康を維持し回復させるためにも有効です。全てが明らかになっているわけではありませんが、完全な腸管内容物から成るCE製品の作用機序として、主に次の3つが考えられています(図1)。:

  1. 生物学的な排除:成鶏由来の好ましい微生物を給与することによって、それらは1日齢の雛の腸管に数時間以内に定着します。最初に定着した腸内マイクロバイオータは、腸管内腔に存在する栄養素を最初に利用することが出来ます。たとえ後から好ましくない細菌が来ても、それらは栄養素を利用することは出来ません。さらにCE製品由来の嫌気性細菌が自身にとって好ましい低酸素環境を作り上げてしまえば、酸素を必要とする好ましくない細菌にとっては生存しにくい環境となります。
  2. 物理的な排除:好ましい細菌が腸管壁の付着部位を占領することで、病原細菌や炎症の原因となる細菌の定着や、産生物の付着を防ぐことが出来ます。
  3. 化学的な排除 :好ましい微生物がバクテリオシンや揮発性脂肪酸のような抗細菌作用のある物質を産生することで、病原菌の発達を抑えることが出来ます。

CE製品で確立された腸内マイクロバイオータによる、サルモネラの排除

実際に近年実施された試験では、ブロイラーの雛にCE製品『アヴィガード』を与えることによって、サルモネラ インファンティスの定着を完全に抑制することが出来たことが示されています(ラレマンド社内データ, 2020; 図2)。

図2. 8日齢の雛の盲腸内容物中の Salmonella Infantis の生菌数 (n=9 羽/区; 2日齢 時にS. Infantis 強制感染

結論

正常な腸内マイクロバイオータを含んだ競合排除(CE)製品に、鶏の健康を守る働きがあることは、数十年前から知られています。競合排除の概念は養鶏業界で広く認知されており、抗生物質の使用削減につながることが期待されています。
CE製品によって正常な腸内マイクロバイオータを確立・回復・維持することで、鶏の健康と福祉に良い影響が見られます。正常な腸内マイクロバイオータは、サルモネラや大腸菌、ウェルシュ菌などの好ましくない細菌から鶏を守る役割を担っています。これらの病原菌は、鶏の飼養に悪影響を与えるだけでなく、畜産物の食の安全を脅かします。
世界を挙げて抗生物質の削減が目指される今、CE製品の使用は、養鶏において効果的なバイオセキュリティ対策として期待されています。CE製品によって抗生物質による治療を減らすことができれば、薬剤耐性菌の発生を抑えるとともに食品の安全 を守ることにもつながります。

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投稿日 Aug 3, 2022 | 最終更新日 Jan 8, 2024

アヴィガード養鶏