Blog
高繁殖性母豚: 分娩プロセス、子豚の活力と免疫
2020年6月24日、ラレマンドアニマルニュートリションはフィンランドのヘルシンキ大学兼任教授であるクラウディオ オリビエロ氏を招聘し、ウェブセミナーを開催致しました。世界各地から500名近くのご参加を頂き、深く感謝申し上げます。
オリビエロ兼任教授には、「高繁殖性母豚: 分娩プロセス、子豚の活力と免疫」についてご講演いただきました。 講演の内容について、簡単にご紹介いたします。
要約
繁殖能力の高い系統の母豚を用いることによって、この30年間、総産子数は大幅に増加しました。一腹あたりの子豚数が増えるに伴い、分娩所要時間は着実に増加し、一方で子豚の平均生時体重と生時活力は低下し、初乳の取り合いが発生しています。これらは子豚の生存率に、負の影響を及ぼします。母豚は平均で14~16個の乳頭を持っていますが、産乳が不十分な乳頭が存在することもあります。そのため多産の場合には、授乳期の管理も難しくなります。また子豚の数が増えることで、新生子豚へ直接の影響も生じます。一腹あたりの子豚の数が多くなるほど、生時体重は小さくなり、同腹子豚の体重のばらつきは大きくなります。
利用可能な乳頭の数を上回る数の子豚が生まれ、生時体重が低下し、生時体重のばらつきが大きくなることは全て、子豚の初乳摂取の競争を厳しくさせます。同様に、生時体重の低下と分娩所要時間の増加は、子豚の生時活力の低下につながり、子豚が乳房にたどりつくまでの時間を遅延させます。
母豚の初乳量を向上させる方法としては、飼料設計の変更、特別な給餌プログラムや母豚の管理などが挙げられます。実際に高繁殖性母豚の繁殖成績を向上させるために行われている方法には、次のようなものがあります。
- 巣作り行動を促す
- 妊娠後期の過肥を避ける
- 便秘を減らし、腸管の機能を整え、子豚への受動免疫を改善する
– 妊娠後期と授乳初期の高繊維飼料給餌は、負の影響を及ぼさない
– 十分な水を給与する
– 目的を持った飼料添加物(生菌酵母や樹脂酸)は、初乳の産生量や免疫グロブリン量(IgG、 IgA) を増加させる
- 分娩開始から6時間以内の初乳摂取量を最大化する
オリビエロ兼任教授の発表の後、ブラボー・デ・ラグーナ氏は、スペインにてダンブレッド種を用いて最近行った試験について、発表を行いました。分娩期は、母豚の消化と腸内マイクロバイオータ(細菌叢)が変化する時期です。この試験では、腸内マイクロバイオータのバランスを改善することが知られている飼料添加物に着目し、分娩期の母豚への影響を調べました。この試験の結果、プロバイオティクス酵母であるサッカロマイセス セルビシエ 変種 ブラディアイCNCM I-1079(レブセルSB)を、妊娠期と分娩期の母豚に給与すると、妊娠期の母豚の背脂肪厚の増加や子豚の増体などが見られ、生産成績が改善したことが示されました。
本講演の録画ビデオは、こちらのリンクより見ることが出来ます。
https://www.youtube.com/watch?v=JFZRGQKn9Mo
「高繁殖性母豚の消化」についてさらに詳しく知りたい場合は、下のリンクより資料をダウンロードすることができます。クラウディオ オリビエロ氏のインタビュー記事も掲載されています。
目次
- 高繁殖性(多産系)が母豚と子豚に及ぼす影響
- 重要な目標:母豚の快適な消化とマイクロバイオータ(細菌叢)のバランス
- 生きた酵母の給与が繁殖性の高い母豚にもたらす利点
- 母豚の福祉と巣作り行動に注目:クラウディオ オリビエロ兼任教授への3つの質問
- 高繁殖性母豚の管理に役立つ栄養戦略
- まとめ
投稿日 Jun 30, 2020 | 最終更新日 Jun 26, 2024