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子豚に使用する酸化亜鉛と抗生物質を削減する「体の内側と外側からの」新しいアプローチ
本記事のオリジナルは、2021年11月10日にオンライン専門誌『Feed info news services』に掲載されたものです。発行元の許可を得て日本語に翻訳しましたので、ご紹介いたします。
子豚に使用する酸化亜鉛と抗生物質を削減する
「体の内側と外側からの」新しいアプローチ:
ラレマンド社が産業視点から提案
EU(欧州連合)では2022年6月から、養豚での薬理学的レベルの酸化亜鉛(ZnO)の使用が禁止になります。高濃度のZnOについては、EU以外の世界各地でも問題視されてきており、代替策が求められています。腸管トラブルを抱えやすい離乳後の子豚への取り組みとして、抗菌剤に頼らない様々な栄養的な解決策が、生産現場に提案されています。
離乳期の腸管の機能を維持するための解決策として、私たちは往々にして快適な腸内環境を形成さえすればよい、と考えがちです。しかしラレマンドアニマルニュートリションでは、対策を畜舎環境にまで広げて取り組んでいます。
子豚の健康を維持するための「体の内側と外側からの」アプローチとして、ラレマンド社では2つの方法を活用した解決策を提案しています。1つ目は、既に確立されているプロバイオティクス酵母や酵母派生物製品を給与することです。そして2つ目は、子豚舎のバイオセキュリティにも働きかける新しい対策です。こうした2つの解決策は、近年問題視されている抗生物質や高濃度のZnOのような抗菌剤の使用量削減を可能にします。
Feedinfoでは、抗菌剤の使用低減のための多面的戦略について、ラレマンド社にインタビューを行いました。
インタビュワー:Feedinfo社の記者
インタビュイー:ラレマンドアニマルニュートリション
- ヤンニグ ル トロット(最高経営責任者)
- デイビッド ソニレ(養豚製品マネージャー)
- ピエール ルブルトン(単胃動物製品マーケティング・技術部門マネージャー)
Feedinfo:離乳子豚の飼料中の抗菌剤への依存を削減してきた飼料業界のこれまでの取り組みは、どの程度の成功していると考えていますか?
ヤンニグ ル トロット:私がこの業界に従事した30年の間に、まさに取り組みの変化が生じるのを目の当たりにしてきました。かつて、コリスチンを含めた抗菌剤が添加されている離乳期飼料の割合は、95%にも上りました。しかし抗菌剤からの脱却に本気で取り組んできた国を見ると、現在では30%未満にまで減っています。
過去には、少量なら安全だろうという考えの下、子豚飼料に低用量の抗生物質が添加されていました。しかし現在では、低用量の継続的な抗生物質の添加は、薬剤耐性化を促すリスク要因であることが知られています。一部の飼料会社では、既に子豚飼料から抗菌剤を完全に排除しており、この取り組みは成功と言えるでしょう。しかし抗菌剤の利用を止めた場合、残された課題はどのように解決すればよいのでしょうか?
その答えは、多方面からの総合的なアプローチだと考えています。養豚業界では、主に次の3点がポイントとなります。
- 畜産学的な飼料設計(たんぱく質の低減・・・)
- 原料の選択と飼料原料の質(栄養価、消化性及び安全性)
- 機能性添加材の利用
私が「道徳的」と呼んでいるこの新しい時代の流れは、特にプロバイオティクスの使用の促進につながっています。
しかしこの新しいアプローチを農場で導入するには、経済的な制約があります。抗菌剤に使用していた費用が、機能性飼料や飼料設計、より質の高い飼料原料への投資に振り替えられることを期待する向きもありましたが、そうはいきませんでした。抗菌剤と同じだけの予算を投資する準備は整っておらず、このことが上記の代替策の遂行を困難にしています。
畜産業界における抗菌剤への依存を、さらに減らすことはできます。しかしそれには、これまで投薬に要していたのと同じレベルの投資を行う必要があります。長期的な利益を確保するには、短期的な投資が重要だという事実を理解しなくてはいけません。
Feedinfo:ラレマンド社の「体の内側と外側からの」アプローチでは、薬剤耐性化に対して、どこに改善の余地があると考えますか?また状況の変化について教えて下さい。
ヤンニグ ル トロット: 当初、ZnOの使用が開始された頃は、非常に高濃度で添加されていました。というのも、添加を中断すると、それまで予防できていた下痢などの腸管トラブルがぶり返すと考えられたからです。そこで、添加量はほぼ有毒レベルに達するほどに増加していました。同様のことは、抗生物質にも起こり得る可能性があります。抗菌剤の添加を中断する際には、セーフティネットが必要になります。これが、腸内マイクロバイオータのコントロールやバイオセーフティ対策が求められる理由です。
ラレマンド社では動物の体内からだけでなく、より農場のバイオセキュリティに重要となる飼養環境中の微生物生態系を管理することによって、抗菌剤の使用低減を目指しています。私たちは、子豚飼料にだけ着目するのではなく、農場と生産サイクル全体を俯瞰して捉えるべきです。例えば、質の良い子豚の育成は、母豚の管理から始まります。なぜなら母豚の腸内マイクロバイオータは、子豚の腸内マイクロバイオータに、離乳後にまで影響を及ぼすためです。従って、子豚の管理を成功させる上で、母豚の管理は重要な鍵となります。腸管の健康を確保して、長期にわたる利益を得ることを考えるのであれば、母豚の栄養は欠かせない要素になります。
また豚を取り囲む環境も重要な役割を担っています。農場環境中のバイオフィルム(微生物の集合体が形成する生物膜)を好ましい状態に整えて、病原体から豚を守ることも考慮する必要があります。
腸内マイクロバイオータに関して、私たちには長年の優れた経験があります。ラレマンド社の生きた酵母製品であるレブセルSB(サッカロマイセス セルビシエ 変種 ブラディアイ CNCM I-1079株)は、欧州当局に1995年に使用が認可されています。そして私たちは、市場の発展やニーズに伴って、製品の改良を続けています。例えばレブセルSBは、最新の飼料製造工程に対しても、安定性を保つことが出来ます。また腸の健康から免疫系の調節まで、解決できる問題の分野がより広い範囲にわたることが分かってきました。このような研究成果を基に、小腸での栄養吸収や子豚の腸管の発達、免疫といった特定の生理学的な目標に対する解決策としても、レブセルSBの活用の場が広がっています。
Feedinfo:抗菌剤の使用低減策の1つとして、バイオフィルムを利用するというコンセプトについてもう少し教えて頂けますか。
ピエール ルブルトン:子豚の内側の微生物生態系を守ることを考えた時、外部環境からの直接的な汚染の管理を無視することはできません。好ましいバイオフィルムに囲まれた環境を作ることは、パズル全体の最後の1ピースのようなものです!
畜舎や畜舎設備のあらゆる表面には微生物が付着しており、その多くはバイオフィルムを形成しています。子豚の生活環境のバイオセキュリティや洗浄消毒技術は、大きく向上してきています。しかし大抵の場合、バイオフィルム中に生息する重要な細菌は、洗浄消毒後も継続して生存しています。農場のバイオセキュリティを守るための新しい解決策となるのが、好ましいバイオフィルムの形成という考えです。畜舎の消毒を終えた後、新しい子豚を導入する前の畜舎の表面に、好ましいバイオフィルムを形成するための有益な細菌を噴霧します。こうして豚舎に好ましいバイオフィルムを速やかに定着させることで、好ましくない微生物が増殖する隙を与えず、畜舎全体を安全に「清浄化」することができます。好ましいバイオフィルムを持つ環境の形成は、バイオセキュリティの最後の要、あるいは、体内の微生物管理の最初の一歩として考えてください。
抗生物質による特定の腸内細菌の全滅に対しての「道徳的」なアプローチが、プロバイオティクスによって腸内マイクロバイオータのバランスを整えることです。同様に、化学的消毒剤に対しての「道徳的な」アプローチが、好ましいバイオフィルム環境を形成することだと考えています。
Feedinfo: 引き続きZnOと抗生物質の使用量を減らすための、「体の内側」と「体の外側」からの包括的なアプローチについてお伺いします。好ましいバイオフィルムの形成に加えて、ラレマンド社の不活化酵母製品やプロバイオティクス酵母製品は、どのような役割を果たせるのでしょうか。
デイビッド ソニレ:離乳直後の子豚の腸の中で何が起こっているのか詳しく見てみると、大抵の場合、ディスバイオシスと呼ばれる腸内微生物のバランスが崩れた状態になっています。これは、腸内の恒常性の変化を誘発する細菌が優勢となりがちな環境です。このディスバイオシスが起こりうるからこそ、子豚飼料には長年に渡って高濃度のZnOと抗生物質が添加されてきました。
酵母を配合した機能性飼料は、それぞれ異なった相補的な働きで、腸内の微生物生態系の安定化を促します。例えば私たちはこの数年、母豚から子への微生物の刷り込み(インプリンティング)について調べています。そして母豚へのプロバイオティクスの給与は、子豚の腸内微生物構成に、離乳後数週間にまで影響を与えることを明らかにしました。この試験結果を開始点として、どのように抗菌剤を使用しない対策に活用できるのかを研究しています。
私たちはより子豚に着目することで、腸内微生物生態系を維持するための相補的な2つの戦略を開発することにも成功しています。1つ目は、子豚に特別な生きた酵母(レブセルSB)を給与することによって、減少しがちな好ましい共生細菌が維持できる微生物環境を作りながら、腸管の生理的な機能を促します。もう1つは、酵母派生物(ヤング)を給与する方法です。ヤングは、数年間にわたる挑戦的な研究開発によって生まれた製品で、機能性で選抜された3菌株の酵母混合物が配合されています。私たちは原子間力顕微鏡法という新しい技術を駆使することで、特定の細菌(例えば大腸菌)に結合する能力や、免疫系への働きかけに優れた酵母株を選抜することができました。これらの働きによって、子豚が持つ自然防御能を助けることができます。
Feedinfo:以前、家畜の健康と成績を栄養面から高めるために、たんぱく源として加水分解酵母製品の利用を調査していると伺いました。加水分解酵母も、離乳子豚の抗菌剤削減での管理に有効でしょうか。
デイビッド ソニレ:ヤンニグも言っていましたが、子豚飼料から抗菌剤を除いた際には、飼料設計中のたんぱく質組成の管理は非常に大切な鍵となります。この場合、たんぱく質の質と量は、どちらも重要です。
新しい酵母たんぱく質製品の利用については、腸の健康に直接働きかける利用方法を探しています。私たちは、製品中のアミノ酸が小腸のどこで、いつ吸収され、腸上皮の形態にどのように関与しているのかを考慮に入れて、調査しています。YELA PROSECURE(イエラ プロセキュア)という加水分解酵母製品は、大腸内の望まないタンパク質発酵のリスクを低減する、という作用機序によって、腸内の微生物生態系を保護することができます。
Feedinfo: EU、米国、中国などの主要な世界的経済圏では、抗菌剤低減を政策として打ち出しています。ラレマンド社の抗菌剤低減戦略に興味を持っているのは、これらの地域の他には世界のどの地域だと思いますか?そして今後どのように投資していきますか?
ピエール ルブルトン:世界保健機関(WHO)では、今後20年間の人の健康に対する主な脅威として、薬剤耐性化を挙げています。そのため世界全体の傾向として、抗菌剤を使用しない、より責任のある畜産へと向かうことが考えられます。ただし国によっては、状況の認識から必要な対策の導入までに、段階的な移行が必要になる可能性があります。おそらく各国が最善を尽くしているとは思いますが、過剰な圧力を、弱体化し危機的な畜産業界にかけることは望まれないでしょう。主要な世界的経済圏であっても、段階的なプロセスをとり、規制や認証はそれぞれに大きく異なると考えられます。
ラレマンドアニマルニュートリションは、抗菌剤に関する課題のみでなく、状況を改善する解決策として、プロバイオティクス酵母による解決策を早期から提案してきました。そして現在、既に多くのデータと経験を蓄積しています。これを生かして総合的な理解を築き、研究開発によって科学的なアプローチを生み出し、効果的な解決をもたらす製品を作り出しています。
抗菌剤依存からの脱却は、私たちの考え方とアプローチを根本から変えていくことを意味します。「治療」から「予防」へ、「単一の独立的な解決策」から「相補的で全体を俯瞰した解決策」へと、向かっていきます。これが私たちラレマンドアニマルニュートリションの問題への取り組み方です。今後も私たちは、課題を解決するための、有益な解決策を提供して参ります。
Copyright 2021. Feedinfo News Service. Original in English; Feedinfo does not vouch for the accuracy of this translation.
投稿日 Jan 11, 2022 | 最終更新日 Jul 10, 2023