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鶏を傷つけずに、大胸筋の厚みと竜骨突起の状態を評価する新手法

鶏を傷つけずに、大胸筋の厚みと竜骨突起の状態を評価する新手法

はじめに

竜骨突起の損傷は産卵鶏に深刻な問題を引き起こす可能性があることが、近年の研究で明らかになっています。竜骨突起は鶏の胸の位置にあります。そのため特に、大胸筋が小さくなっている近代の産卵鶏では変形を起こしやすいのです。多段式のケージフリーシステムの場合で、最大 90%の産卵鶏に竜骨の骨折が見られました。このような竜骨突起の損傷は、鶏に痛みや苦痛を引き起こす可能性があります。品種改良が進むに伴い、現在の鶏は非常に効率的に成長するようになり、カルシウム (Ca) の要求量が高くなっています。このような産卵鶏の特性は、竜骨突起の健康に悪影響を及ぼすことがあります。

注目すべき点は、卵殻形成は骨格からのカルシウム供給に依存していることです。採餌鶏のカルシウムの要求量は、飼料からのカルシウムで60%、骨髄骨からのカルシウムで40%が賄われます。飼料由来のカルシウムを十分に利用できない場合、産卵鶏は骨髄骨からのカルシウムを利用します。骨髄骨からのカルシウム排出が不足すると、今度は骨の他の部位からカルシウムが排出されることになり、骨折や異常が起こりやすくなります。竜骨突起の損傷には、骨折と湾曲の2種類があります。骨折はしばしば、止まり木を含めた鶏舎設備との衝突によって起こり、部分的あるいは大規模な骨の転位をもたらします。このような骨折は痛みを伴うとともに、産卵成績の低下に大きく関与しています。一方で湾曲は、骨粗鬆症や止まり木での休息時間の増加による竜骨突起への継続的な圧力によって、徐々に引き起こされる傾向にあります。産卵期間の骨の発達とカルシウム代謝を適切に保つことは、農場の経済収益と産卵鶏の福祉を守るために重要です。

竜骨突起の骨折率の高さには、卵質の低下との相関関係がある程度存在することが分かっています。また高い産卵率を持続させるためには、筋肉の発達とタンパク質の保持量も重要です。そのため竜骨突起の丈夫さと大胸筋の発達は、産卵成績とその持続性の重要な予測因子になります。ラレマンド社はこれらの指標に関して、鶏を傷つけずに測定する超音波診断法を開発しました。そしてこの手法を用いて、生きた乳酸菌バクトセルの給与が、鶏の大胸筋と骨の発達に及ぼす影響を評価しました。

バクトセルの給与が、大胸筋の発達に及ぼす影響

バクトセルは単胃動物用のプロバイオティクスとして、20年以上も使用実績を持つ生きた乳酸菌株ペディオコッカス アシディラクティシCNCM I-4622です。その機能は、100報以上の科学論文によって証明されています。この乳酸菌株は、特にL-(+)-乳酸を産生する能力に優れていることから選抜されました。L-(+)-乳酸は鶏が利用しやすいエネルギー源です。

バクトセルの給与は様々な鶏(若メス、産卵鶏、肉用鶏)において、大胸筋の厚さを有意に増加させることが示されています(表1)。

表 1. バクトセルの給与が大胸筋の発達に及ぼす影響を測定した複数の試験の結果

また近年実施した試験では、各産卵ステージにおいて大胸筋の厚さを測定しました(図1)。その結果、バクトセルの給与において産卵中期で40%、産卵後期で28%大胸筋の厚さが向上することが示されました(P < 0.001)。

図 1 -産卵鶏にバクトセルを給与した時の各産卵ステージにおける大胸筋の厚みの変化(ラレマンド社内データ, イタリア, 2024)

バクトセルが骨の代謝に及ぼす影響

適切な卵殻質を維持するためには、骨強度と石灰化度が大切です。50週齢の産卵鶏にバクトセルを14週間給与した試験では、骨中のカルシウムとリンの濃度が、バクトセル区で高くなりました(カルシウム+4%、リン+7%, P < 0.05)(Shanmugam et al., 2024)。また消化管からのカルシウムの吸収を促す働きのある、血中カルシトリオール濃度が83%高まりました (P< 0.05) 。血中のオステオカルシン濃度も、2.75%増加しました(対照区: 278.55 vs バクトセル区: 286.20 ng/mL, P<0.1)。オステオカルシンは、骨代謝のカギとなるホルモンです。 骨芽細胞によって合成され、骨芽細胞の活性や骨形成のバイオマーカーとして用いられています。

そして近年、バクトセルの給与で健康な骨代謝が維持されたことによって、産卵鶏の竜骨突起の湾曲 (バクトセル区10% vs 対照区20%) と骨折 (バクトセル区40% vs 対照区55%)が減少したことが示されました。結果としてバクトセル区では、竜骨突起に損傷の無い鶏の割合が対照区よりも高くなりました (50% vs 15%)。なお対照区では、竜骨突起の湾曲と骨折の両方が見られた 産卵鶏も存在しました (10%)。 竜骨突起の湾曲や骨折が見られた場合でも、その重症度はバクトセル区の方が少なくなりました(図 2)。

図 2 – 産卵サイクルを通じてバクトセルを給与した時の、竜骨突起の状態の変化 (ラレマンド社内データ, イタリア, 2024)

おわりに

超音波検査を用いて大胸筋の発達と竜骨突起の状態を評価することによって、鶏を日常的に解剖する必要が無くなります。したがって超音波検査は、鶏の福祉を守りながら、産卵成績と卵殻質を予測するための貴重な診断手法です。

ラレマンドアニマルニュートリションはこの非侵襲的な手法を用いて、生きた乳酸菌株ペディオコッカス アシディラクティシCNCM I-4622(バクトセル)の給与が、大胸筋の発達と健康な竜骨突起の維持に良い影響を与えることを示しました。

参考資料

Shanmugam, S., Barbé, F., Park, J.H. et al. Supplemental effect of Pediococcus acidilactici CNCM I-4622 probiotic on the laying characteristics and calcium and phosphorus metabolism in laying hens. Sci Rep 14, 12489 (2024). https://doi.org/10.1038/s41598-024-62779-5

本資料は医薬品的効能効果を標榜することを目的としたものではありません

投稿日 Oct 22, 2024 | 最終更新日 Nov 7, 2024

バクトセル養鶏