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有機セレンの選び方
適切な有機セレン製品を見分けるには?
有機セレン(Se)製品について語る際に、「生物学的利用能」「品質」「価格」という3つのキーワードを避けることはできません。畜産業界では、近年有機セレンの使用量が非常に増加しており、それに伴って市場には多くの有機セレン製品があふれています。栄養学の専門家はミネラル源として、“無機セレンではなく有機セレンの給与が有効”であることを認識しています。しかし有機セレンの中でも最良の製品を選ぶ際には、注意が必要です。様々な規格と値段の製品が存在するセレンの森の中から、最も費用対効果に優れた製品を選び取ることが大切です。
有機セレンの品質を評価するためには、どのような点を比較すればよいでしょうか?欧州市場で流通している有機セレンについて、評価基準の概要を示したいと思います。
有機セレン
a)セレン酵母
セレン酵母は、自然界で起こっているセレン同化プロセスを模倣して、工業的な管理下で製造されます。植物は土壌中の無機セレン(ミネラル)を利用し、アミノ酸として取り込みます。取り込む際には、特定のアミノ酸の硫黄原子をセレン原子に置き換えます。そして例えばセレノメチオニン(SeMet)やセレノシステイン(SeCys)といった、セレン含有アミノ酸として取り込みます。その後これらのセレン含有アミノ酸から、セレン含有たんぱく質が作られます。この原則は、酵母でも変わりません。酵母培養時に無機セレンを培地に加えると、酵母細胞は有機セレン化合物としてセレンを取り込みます。有機セレンの中には植物と同じように、異なるセレン含有アミノ酸が存在しています。そのためセレン酵母は、動物の栄養源として非常に自然な形です。多くの研究によって、有機セレンは、無機セレンと比べて生物学的利用能が高いことが証明されています。
b)合成有機セレン
この数年、合成セレノメチオニンのような新しい有機セレン源が、欧州市場に登場しました。合成有機セレンは、化学合成によって製造されます。セレン中の有機セレンの割合は、セレン酵母と同等です(>98%)。セレン酵母は、セレノメチオニンだけでなく、他のセレン含有アミノ酸を含んでいます。対照的に合成有機セレンは、ヒドロキシ類似体または亜鉛(Zn)とのキレート態の形で、純粋な1種類のセレン含有アミノ酸(例えばセレノメチオニン)のみから成っています。
生物学的利用能
動物が摂取したセレンは、きちんと同化され、体の組織に届いているでしょうか?これが生物学的利用能と定義されている指標であり、最も重要です。
セレン酵母と合成有機セレンを比較する試験は、今までに沢山存在しています。しかし大多数の試験は、組織中のセレン濃度のみを測定しており、セレンの移行率(組織中のセレン量/実際に摂取したセレン量)までは調べられていません。
ラレマンドアニマルニュートリションではブロイラーを用い、セレン中のセレノメチオニンの割合が100%であるとされる3つの合成有機セレン製品(Zn-SM、SM1、SM2)およびラレマンド社のセレン酵母「アルコセル」、無機セレンについて、生物学的利用能を測定しました 。筋肉中のセレン濃度は、アルコセルと合成セレノメチオニン製品で有意差はありませんでした。しかしセレンの移行率を考慮すると、違いが見えてきます。有機セレンの中でアルコセルは、セレンの移行率が最も高いことがわかります(図)。
図:胸肉中のセレン濃度(左)と移行率(右):
異なるセレン源を飼料中に0.2mg/飼料kg添加し、14日間ブロイラーのヒナに給与した(p<0.001)。
セレン酵母の品質
セレン酵母製品は、物によって製造方法・外観・精製度・品質が異なります。結果として、動物に給与したときの生物学的利用能と吸収動態に、大きな違いが見られる可能性があります。同じ原理を用いてセレン酵母を製造していたとしても、高濃度のセレン酵母の製造には、高い専門技術を要します。さらに酵母の性質は、菌株によって異なります。つまり菌株によって、有機セレンの合成量が異なります。そのためセレン濃度の高いセレン酵母を作るためには、特別な菌株を用いる必要があります。その上で、製造工程と発酵状態を適合させなくてはいけません。発酵工程で重要となるのは、培地への無機セレンの添加速度です。酵母細胞による最適なセレンの取り込みと、排液中へのセレンの流出を最小限にすることを両立させます。
高品質で、高濃度のセレン酵母を作るには、特別な製造工程を設定する必要があります。1つの指標をわずかでも変えると(例えば温度、pH、通気、無機セレンの添加方法)、最終製品の品質が大きく変わります。そのため製造工程と最終製品の品質は、徹底的に管理しなくてはいけません。例えば利用者にとって、製造バッチ毎のセレンとセレノメチオニン含量の保証は不可欠です。セレン酵母に含まれる有機セレンはセレノメチオニンだけではありませんが、セレノメチオニンは発酵成績を測る優れた指標となります。そのためバッチ間で安定した値が求められます。
最重要項目ではありませんが、外観も品質を判断するための良い指標です。明るいベージュ色は、品質が優れているサインです。暗い茶色の外観をしている場合、消化性の低いセレン酵母であることを表しています。酵母の発酵培地には、糖蜜(濃い茶色)を用います。そのため洗浄が不十分である場合、セレン酵母クリームに糖の残渣が残留します。このクリームを乾燥させると、糖とたんぱく質が熱によるメイラード反応(焼け焦げ)を起こします。この反応が起こった場合、消化性が低下し、動物が利用できるセレン含量が低下します。
ラレマンドアニマルニュートリションのセレン酵母製品
「アルコセル」の製品概要は、こちらから見ることができます。
より詳しい情報をお知りになりたい場合は、
製品概要ページの下部にあるフォームよりお気軽にお問い合わせくださいませ。
参考文献
Barbé F., Sacy A., Poulain S., Chevaux E., Castex M. Comparison of Se bioavailability in laying hens fed different organic Se sources. 21st European Symposium on Poultry Nutrition 2017, Salou / Vila-Seca, Spain, May 8-11, 2017.
投稿日 Jun 21, 2019 | 最終更新日 Jul 24, 2023