代用乳への酵母混合物で新生子牛の適切な免疫を維持

　子牛は生後最初の1 ヶ月間に、免疫と腸管が大きく発達します。そして、生後2カ月間の子牛の状態は、将来の生産成績に極めて重要な影響を与えます(Abuelo et al., 2021; Buczinski et al., 2021)。この大切な時期の子牛の健康維持に、役立つ情報をご紹介します。

■ 免疫システムの成長
　出生後の子牛は、初乳から得る母親の移行抗体によって守られます。その後の子牛は成長に伴い、自身の免疫を発達させていきます。しかし自身の免疫が発達し始める時期は、ちょうど母親からの移行抗体が少なくなる頃に重なります。この時期の子牛は、防衛力がとりわけ脆弱であり、適切な管理が求められます (図 1)。また特に1週齢時の子牛は、大腸菌やサルモネラなどの好ましくない細菌による消化器疾患のリスクが高くなっています。

図1. 子牛の免疫システムの成長
（Hulbert et al., 2022)

■ 子牛への酵母混合物の可能性
　若齢反芻動物がこの時期を乗り越えるには、良好な管理と栄養が重要です。対策の一つとして、動物本来の防御能を適切に維持するための機能性飼料である、ヤングの給与がおすすめです。ヤングには、3菌株の不活性酵母が含まれており、次の2つの働きがあります。

■ 腸内マイクロバイオータのバランスの改善
　近年、ポーランドのルブリン大学で実施された試験についてご紹介致します（Villot et al., 2022）。この試験では、子牛の代用乳にヤングを混和して給与し、糞便中のマイクロバイオータと健康状態の評価を行いました。
　この試験では、ヤングを給与することによって、糞便中の微生物構成の変化が確認されました。ヤングを給与した子牛では、無添加の場合と比べ、10日齢時点での乳酸菌（ビフィドバクテリウム属）と、粘液生産と免疫調節に関わるアッカーマンシア属細菌が増加しました。また65日齢時には、腸管の成熟やプロピオン酸産生に関わるとされるサクシニクラスティカム属細菌が多くなっていました（図2)。

図2. ヤング給与による65日齢時の糞中マイクロバイオータの構成の変化

■ 治療費の削減と生産成績の改善
　先の試験では、ヤングの給与によって子牛の健康が保たれ、結果として糞スコアが改善し、抗生物質投与が減少しました。これは生産成績の改善につながり、ヤング給与区では5～35日齢間の日増体量が有意に12%増加し、離乳日齢が早まりました。

■ 結論
　生後最初の数か月は、将来の生産性に決定的な影響を与えます。子牛の健康を十分に維持し、将来に渡って最適な生産成績を守りましょう。

ヤングについてより詳しい情報をお知りになりたい場合は
こちらをご覧ください。

＜参考文献＞

Abuelo A., C. Faith, A. Hanes, J. L. Brester. 2021. Impact of 2 Versus 1 Colostrum Meals on Failure of Transfer of Passive Immunity, Pre-Weaning Morbidity and Mortality, and Performance of Dairy Calves in a Large Dairy Herd. Animals11(3), 782;

Buczinski S., D. Achard, E. Timsit. 2021. Effects of calfhood respiratory disease on health and performance of dairy cattle: A systematic review and meta-analysis. Journal of Dairy Science. 104(7):8214-8227.

Hulbert, L. E., & Moisá, S. J. 2016. Stress, immunity, and the management of calves. Journal of Dairy Science, 99(4), 3199-3216.

Villot C., Kowalczuk-Vasilev E., Duniere L., Gauthier M., Chevaux E. 2022. Nutritional supplementation of a multi-strains yeast fraction improves health and increases beneficial gut microbiota of pre-weaned dairy calves. AH-35. Page 112 Proc. (Vol 1) 31st World Buiatrics Congress 2022, Madrid, Spain.