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酵母由来の飼料原料が、魚の健康な免疫と皮膚防御の維持に貢献
ポルトガルのマデイラ島では、2021年10月4日~7日に欧州水産学会( European Aquaculture Society meeting )が行われました。ラレマンドアニマルニュートリションは、酵母を配合した機能性飼料(製品名:ヤング)の給与が、魚の生来の防御機構である免疫と皮膚に及ぼす影響について、新しい3つの研究を報告しました。
魚は成長に伴う多くの要因によって、免疫が不安定になったり、複雑な健康制御が行われることがあります。 ラレマンド社では、微生物由来の飼料原料を用いて、魚が持つ本来の免疫防御機構を健康に保つことを目指しています。この度の報告では、自然由来の微生物を用いた解決策が、養殖時のストレスに対する適切な抵抗性の維持に貢献することが示されました。
サーモンの海面養殖において、淡水浴と薬浴の反復浸漬の負の影響を緩和する
1つ目の研究報告として、水産養殖技術サポート&研究開発マネージャーであるエリック ルクレールが口頭発表を行いました。ここでは、スモルト化(銀化変態)後のアトランティック サーモンを用いて、機能性飼料の給与の影響を測定した試験について報告しました1 。外部寄生虫対策として行う淡水浴と薬浴の反復浸漬は、魚の健康と粘膜の丈夫さに負の影響を与えます。そのため、このストレスを緩和させる手段が求められています。
この試験は、商業的な海面養殖で一般的に行われる外部寄生虫対策を、模擬的に再現して行われました。給与する機能性飼料としては、複数株の酵母混合物(製品名:ヤング)と一次段階の抗酸化酵素であるスーパーオキシドディスムターゼを豊富に含んだメロン濃縮物(製品名:メロフィード)を併用しました。本研究はスコットランド水産革新センター (SAIC)の後援を受けており、エルベ ミゴー教授の監査の下、イギリスのスターリング大学にて実施されています。
- この研究では、2回の淡水浴と1回の薬浴の反復浸漬が、粘膜の健康と生理的な指標に、明らかな影響を与えたことが示されました。
- 機能性飼料を給与された魚では、2回の淡水浴と1回の薬浴の反復浸漬を行った後の慢性的なストレスの指標が、対照区より低下していました。また皮膚の粘膜バリアと抗酸化状態がよりよく維持されていました。
発表者らは、「機能性飼料の給与は、反復浸漬に伴う皮膚粘膜の丈夫さと回復に与える負の影響を、緩和することができた。」と結論付けました。機能性飼料のこの働きによって、魚と養殖場に有益な結果をもたらすことが期待されます。
健康な皮膚と粘膜を保つ
この学会ではポスター発表にて、ヤングの給与が魚に与えた利点について更に2つの試験を紹介しました。
2つめの研究報告では、ゼブラフィッシュの成体にヤングを連続給与し、その後に皮膚を物理的に損傷させた場合、健康な創傷治癒が維持されたことが報告されました2。ヤング給与区では、炎症反応のバランスが優れており、組織を再構築する際に働くバイオマーカーの量が増加しました。そして結果として、傷口の肉芽組織(新しい結合組織)の適切な形成が維持されていました。
3つ目の研究報告では、パートナーであるイギリスのプリマス大学で実施された研究について、報告を行いました。この試験ではニジマスの稚魚へのヤングの給与は、鰓、皮膚、腸にある粘膜関連リンパ組織の免疫反応と粘膜バリアに影響を与えることが示されました3。結果として、ヤング給与区では、適切な粘膜バリア防御が維持されました。
これらの3つの研究報告は、自然由来の微生物製品を使用することによって、魚の適切な生産成績とストレス抵抗性を維持することが出来ることを証明するものとなりました。
ゼブラフィッシュを用いた皮膚の創傷修復モデル
左:皮膚の傷口 右: 皮膚の傷口の修復過程
参考文献
投稿日 Feb 4, 2022 | 最終更新日 Jul 10, 2023