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分娩前からの生きた酵母の給与は、 子への健康な免疫移行と生体重の増加に貢献

分娩前からの生きた酵母の給与は、 子への健康な免疫移行と生体重の増加に貢献

“生きた酵母はルーメンの微生物バランスを改善することで、母羊の初乳中の免疫グロブリン濃度を高めます。この良い影響は、生まれてくる子羊にも引き継がれます。”

2021年10月13日~15日に行われた第12回 腸内微生物国際シンポジウム(12th International Symposium on Gut Microbiology) において、ラレマンドアニマルニュートリションのリシアン デュニエール博士は、分娩前からの雌羊への生きた酵母の給与が、母羊と新生子羊の両方に良い影響を及ぼすことを明らかにしました。この結果は、ルーメン機能の最適化と、初乳の質の改善による健康な免疫によって得られたと考えられます。

ルーメン機能と母親から引き継がれる影響を結び付けたこの革新的な研究は、クレルモン・オーベルニュ大学とフランス国立農業・食糧・環境研究所(INRAE, UMR 454 MEDIS)の協力によって実施されました。

ルーメンから乳房へ

この研究に関して、ラレマンド社で反芻動物の最先端研究を 行っているデュニエール博士のコメントをご紹介いたします。

l「分娩前後は代謝や飼料が大きく変化し、ルーメン機能やその中のマイクロバイオータ(微生物相)が影響を受けます。そのため反芻動物にとって最も難しい時期の1つです。以前の研究において、分娩前後への生きた酵母の給与は、ルーメンマイクロバイオータを安定化(繊維分解菌の相対存在比の維持)させることが示されています。今回の新しい研究は、その結果を裏付けるものとなりました。この試験において私たちは、ルーメンから乳房へと踏み込みました。その結果、分娩前後への生きた酵母の給与が母親のルーメンに及ぼした影響は、初乳中の高いIgG濃度につながり、新生子羊にも良い影響を与えたことが示されました。」

この研究では、妊娠している雌羊を各区14頭ずつの2区に分け、分娩前1カ月から片方には対照飼料、もう片方には生菌酵母サッカロマイセス セルビシエ CNCM I-1077 (レブセル SC)を給与しました。

ルーメンマイクロバイオータの安定化

今回の試験では過去の研究と同様に、分娩前後のルーメンマイクロバイオータの動態について、メタゲノム解析を行いました。その結果、分娩は繊維分解細菌の相対存在量を低下させることが分かりました。しかしルーメン用の生きた酵母を給与された区では、この負の影響が緩和され、分娩前後の繊維分解細菌の相対存在量がより安定していました。結果として、安定したVFA濃度のルーメン発酵が保たれました(下図)。

初乳の質の向上

さらに生きた酵母を給与した雌羊では、対照区の雌羊よりも初乳中のIgGが有意に高いことが示されました。これは子羊への免疫移行がより促されることにつながります。実際に酵母区の雌羊から生まれた子羊の血中IgG 濃度は、生後直後および生後1週間の両方で対照区から生まれた子羊よりも有意に高くなっていました (図 1)。加えて、生体内で抗菌活性を持つラクトフェリンやシアル酸の初乳中濃度が高くなることも明らかになりました。このことも、新生子羊の健康と消化管の発達に良い影響を与えると考えられます。

図1: 母羊への生きた酵母の給与が、初乳と子羊の血清中のIgG 濃度に与える影響

子羊の成績

母親が生きた酵母を摂取することによって、子が得られる利点は2つあります。:

  1. 初乳を介した健康な免疫防御の維持
  2. 生時体重の増加 (平均+327 g):この結果が得られた理由の一つは、妊娠後期の飼料利用性が向上したためと考えられます。

結論として、妊娠している反芻動物に給与した生きた酵母は、ルーメン内での繊維分解菌の安定性に寄与し、飼料からより多くのエネルギーを取り出します。このような母羊のルーメン機能の改善が、新生子羊への優れた免疫移行や生時体重の増加に関係したと考えられました。

参考文献 Duniere L., Renaud J., Steele M. A., Achard C. S., Forano E., Chaucheyras-Durand F. A live yeast supplementation to gestating ewes improves bioactive molecules composition in colostrum with no impact on its bacterial composition and beneficially affects immune status of the offspring. Oral Presentation 12th International Symposium on Gut Microbiology, 13-15 October 2021.

On-line publication: BioRxiv, https://doi.org/10.1101/2021.10.14.464371

投稿日 Nov 14, 2021 | 最終更新日 Feb 5, 2024

レブセルSC