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暑熱ストレスが牛に与える影響と、飼養面からの6つの確認ポイント

暑熱ストレスが牛に与える影響と、飼養面からの6つの確認ポイント

今年も暑い夏がやってきました。暑熱ストレス条件下において、乳牛では25 ~40%産乳量が減少し1)、黒毛和種の飼料効率も低下すること2)が知られています。暑熱ストレスが牛に与える影響と飼養面からの6つの確認ポイントについて、皆さんと考えたいと思います。

暑熱ストレスに対する牛の反応

牛は暑熱ストレスを受けたとき、①熱の発散と、②熱産生の抑制の二つの方法で、体温の安定を保とうとします。図1に、暑熱ストレスを受けたときの牛の反応をまとめています。

 図1 暑熱ストレスを受けた牛の反応

熱の発散に関する変化には、例えば、皮下血流量や呼吸回数、よだれ流量の増加などがあげられます。この活動に要する動物の維持エネルギーは、外気温35℃で通常よりも20%増加するといわれています。これは乳産生や増体のためのエネルギーが、浪費されてしまうことを意味します。

熱産生の抑制では、採食行動に変化が見られます。牛の熱産生は主にルーメン発酵によって起こるので、牛は、乾物摂取量を減らして発熱を抑えます。また反芻も熱を発生させるため、急激に反芻回数が減少します。さらに明け方や夕方などの涼しい時間に固め喰いし、そのなかでも消化にかかる熱量の少ない穀物や蛋白質飼料を選び喰いするようになります。

暑熱ストレスに対する牛のこのような反応は、ルーメン内pHの低下を招くことが知られています。その理由は、主に次の3つです。

  • 呼吸回数増加に伴って血中のCO2が不足すると、体内のイオンバランスを保つために、pHを安定化させる働きのある唾液中の重炭酸イオンが減少するため
  • 反芻回数の減少とよだれ流量の増加により、ルーメンに届く唾液量が減少するため
  • 固め喰いや繊維に対する穀物摂取割合が増加することによって、急速な発酵が起こりやすくなるため

ルーメンpH が低下すると、どのような問題が起こるでしょうか。問題の一つに繊維消化の抑制が挙げられます。ルーメン内の繊維分解細菌は酸に弱いものが多く3)、pH6.0 を下回ると繊維消化が抑制されてしまいます。

暑熱ストレス時の牛群管理の6つの確認ポイント

暑熱ストレス時の牛群の採食量の低下、繊維消化の抑制、そして増体・産乳量の低下を抑えるために、飼養管理面から何ができるでしょうか?ラレマンドアニマルニュートリションでは、暑熱ストレス時の牛群管理の6つの確認ポイントをまとめました。

  1. 十分な飲水量を確保
  2. 涼しい時間帯に給餌
  3. 選び食いの抑制
  4. 発熱したサイレージの廃棄
  5. ルーメン内での飼料消化の最大化
  6. 適切な酸化/抗酸化バランスと免疫機能の維持
これら6つのちょっとした農場の飼養管理の改善によって、暑熱ストレス下でも牛の生産成績を高く保つことができます。ぜひ出来るところから実践してみてください。

動画内で紹介された、暑熱ストレス下の牛群管理に関係する製品

参考文献

1)Tao et al., 2018. Symposium review: The influences of heat stress on bovine mammary gland function.  Journal of Dairy Science. 101:5642-5654.

2)前田ら 2017. 暑熱環境が黒毛和種去勢肥育牛の飼料摂取量,発育,血液成分および飼料消化性に及ぼす影響. 日畜会報 88( 3):281-291

3)Russell and Wilson 1996. Why are ruminal cellulolytic bacteria unable to digest cellulose at low pH?  Journal of Dairy Science. 79:1503-1509.

投稿日 Aug 3, 2021 | 最終更新日 Jul 9, 2023

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